一般社団法人小県医師会

書籍紹介

東日本大震災記録集

カテゴリ: 書籍紹介 投稿日:2014/7/3

画像: 東日本大震災記録集惨状に医療の原点を見る
―2011.3.11 東日本大震災医療支援―
小県医師会災害医療活動記録


平成23年3月11日午後2時46分、三陸沖を震源とする巨大地震は、巨大津波を引き起こし、海辺に臨む美しい町並み、漁港、景勝地、田園などを瞬くまに破壊し尽し、一瞬にして目を覆うばかりの姿に変えてしまった。それどころか東日本沿岸に住む多くの人々の命の生活さえも奪い、忘れることのできない傷痕を残した。

地震発生直後よりリアリズムで時々刻々と伝えられる惨状は、かつて私たちが経験したことのない想像を絶するものであり、被災された多くの人々の悲痛な思いをひとりの人間として、また医師として、どう受け入れ、どう対応すべきかが問われていた。小県医師会員の知人や友人などから次々に過酷な情報が寄せられていた。そんな矢先、新聞に義援金募集の記事が載った。早速にも医師会として義援金を振り込んだが、被災者の方々は、果たして今義援金を必要としているだろうかととの疑念が残った。同時に義援金で済ますことの自責の念に駆られるなか、連日報道されるテレビや新聞等の現地の悲惨な状況から、被災者の方々は身体的及び精神的援助を望んでいるとの確信に至った。「g日遠近よりも先ず現地に行くべき」との会員の声は日増しに強まり、医師としての使命感を認識させられるものであった。私たちだけではない。多くの人々が関わり、私たちと同じ思いを抱いていた。

「とにかく、今、一刻も早く」という会員の要望から、先発隊(丸山隊)が組織され、現地までの行程や現地状況の把握、それに宿泊先の確保など、綿密な調査、分析、手配等を会員自らが率先して行い、現地の友人や知人を頼りに日医や県医からの指示のないままに見切り発車した。先発隊から次々に寄せられる現地の状況は、テレビや新聞等の情報よりも遥かに生々しく具体的であり想像を超えていた。これらの状況報告をもとに様々な計画が練られ医療支援活動は始まったが、現地での活動は一時的なものでなく、計画的且つ持続的な支援が望まれていることを再確認した。

上田から盛岡、そして大槌町と往復12時間余の道のり、また、食事や宿泊など自己完結型の生活、日常診療とは異なる診療形態や診療時間など、1チーム1週間かけての医療支援は約2ヶ月に亘ったが、交通事故や疲労等を考えると、私たち自身も常に危険と隣り合わせであった。しかし、身も心も打ちひしがれた人々のために、労を厭わず参加してくれた会員、また、協力を惜しまなかった他の医療関係者の心に、大災害の惨状を目の当たりにして「医療の原点とは何か」火がともったと確信している。その思いのすべてをこの冊子に担わせるのは不可能かもしれない。しかし一遍の記録として次の盛大へ伝えたいと思う。

亡くなられた多くの方々へ哀悼と鎮魂を胸に刻み、ご冥福をお祈りしたい。

平成24年7月8日

小県医師会長 塚 原 正 典

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